- ETH保有者数3.12億人で過去最高
- イーサリアライズは「コミットメント」と反論
価格下落と記録更新が同時発生
オンチェーンデータ分析プラットフォーム「Token Terminal(トークンターミナル)」は14日、イーサリアムの2026年第2四半期(Q2)レポートを公開し、主要指標から見て「記録的な第1四半期の後の整理・統合の四半期だった」と評価した。
レポートによると、Q2ではトランザクション数、スループット、ステーキング比率、イーサリアム(ETH)保有者数はいずれも過去最高を記録した。また、取引手数料とETHのバーン量は、3四半期ぶりに前四半期比で増加した。
一方、月間アクティブユーザー数、完全希薄化後時価総額、エコシステム全体のTVL(預かり資産の総額)は、市場全体の下落に伴って減少した。
出典:Token Terminal
Q2の主要指標は以下の通り。
- トランザクション数:2億390万件(前期比 +1.7%、前年同期比 +68.4%) *過去最高
- 1秒当たりのトランザクション処理件数(TPS):25.9(前期比 +0.6%、前年同期比 +68.4%)*過去最高
- ステーキング比率:0.32倍(32%:前期比 +0.02倍、前年同期比 +0.04倍)*過去最高
- ETH保有者数:3億1,210万人(前期比 +6.6%、前年同期比 +27.4%)*過去最高
- 月間アクティブユーザー数:920万人(前期比 -30.0%、前年同期比 +36.6%)
- エコシステムTVL:2,872億ドル(前期比 -9.2%、前年同期比 +11.4%)
- ETH完全希薄化後時価総額:2,472億ドル(前期比 -14.8%、前年同期比 -6.7%)
- トークン化資産の時価総額:2,031億ドル(前期比 +0.3%、前年同期比 +38.7%)
主要指標をみると、Q2ではトランザクション数と平均スループット(TPS)が過去最高を記録した一方で、月間アクティブユーザーは30%減少した。アクティブユーザーの基盤が縮小する中でもトランザクション数が増加しており、既存ユーザーによる取引頻度が高まったことを示している。
また、ステーキング比率とイーサリアム保有者数の両方において、過去最高を更新したことは、イーサリアム価格が低迷する中でも、ネットワークへの参加や保有を続けるユーザーが増えていることを示している。
エコシステム全体のTVLは前期比で減少したが、セクター別にみると、その背景には資産構成の変化がある。
TVLの内訳では、ステーブルコインが1,834億ドルで前期比0.7%減とほぼ横ばいだった。一方、レンディングは26.1%減の441億ドル、リキッドステーキングは26.2%減の333億ドルと大きく減少した。唯一、RWA(現実資産)関連は5.0%増の165億ドルとなった。
価格変動の影響を受けやすいレンディングやリキッドステーキングが縮小する一方、ステーブルコインの構成比は前年同期の52.3%から63.8%へ上昇した。レポートはTVLの構成がステーブルコインを中心とする形へ変化していると分析している。
トランザクション数が前期比1.7%増にとどまる一方、手数料総額は5,250万ドルと前四半期比で31.6%増加したため、1件当たりの平均手数料は約0.20ドルから約0.26ドルへ上昇した。ただし、前年同期の約0.85ドルと比べると依然として低い水準にある。手数料の伸びがトランザクション数の伸びを上回ったのは、2024年第4四半期以来初めてとなった。
イーサリアムにおける「収益(Revenue)」は、ネットワークが取引手数料から得る価値を指し、具体的にはEIP-1559によってバーン(焼却)されたETHの価値に相当する。バーンされたETHはバリデータへの報酬として支払われず、流通供給量から恒久的に削除される。
出典:Token Terminal
Q2の収益は約1,710万ドルと、前期比112.2%増加し、前期の約810万ドルから2倍以上に拡大した。一方、前年同期比では66.0%減少している。バーン額の伸びが取引手数料の伸びを上回ったことで、手数料のうち供給から削減された割合は、Q1の約5分の1からQ2には約3分の1へ上昇した。
Q2はユーザー数が減少する一方で、取引量が過去最高を更新した。平均手数料も上昇し、ETHのバーンを通じて供給削減につながる割合も高まったと、レポートは総括している。
トークン化資産の拡大
Q2のイーサリアム上のトークン化資産の時価総額は2,031億ドルと、前期比0.3%増、前年同期比38.7%増となった。内訳では、ステーブルコインが1,768億ドルで全体の87.1%を占めたほか、トークン化ファンドは208億ドル、トークン化コモディティは49億ドル、トークン化株式は約6億1,500万ドルとなった。ステーブルコインがほぼ横ばいとなる一方、それ以外の分野はいずれも前期比で増加し、資産の種類が広がっている。
特に、米国短期国債(T-bill)を裏付けとするトークン化ファンドは四半期平均で75億ドルと、前期比55.7%増、前年同期比51.5%増の過去最高を記録した。Q2末には、フランクリン・テンプルトン、オンド・ファイナンス、ブラックロックの主要ファンドがいずれもイーサリアム上で10億ドルを超える規模となった。
また、J.P.モルガン・アセット・マネジメントが5月に発行した2本目のトークン化MMF「JLTXX」は、Q2末時点で6億8,220万ドルまで拡大し、9月初旬には8億ドルを超えた。
チェーン別でも、イーサリアムは主要5チェーンのステーブルコイン市場の61.6%、トークン化ファンド市場の67.6%、トークン化コモディティ市場の71.3%を占め、トークン化資産の多くがイーサリアム上で扱われている。
関連記事:イーサリアム、公開チェーンのトークン化資産の6割超を占める
ブロックチェーン分析のトークン・ターミナルのデータにより、トークン化資産の61.4%がイーサリアム上で決済されていることが判明。残高は2062億ドルに達し、前年比40%超の成長を記録した。
Etherealizeの解釈
イーサリアムの機関投資家向け普及を推進するEtherealize(イーサリアライズ)は同レポートにコメントを寄せ、トークン・ターミナルがQ2を「consolidation(整理・統合)」の四半期と表現したのに対し、「commitment(コミットメント:関与の強まり)」と捉えるべきだと主張した。
同団体はレポートで示された主要指標に言及し、資産価格が低迷するなかでも、ネットワーク利用者とネットワークを支える人々は、むしろ関与を強めたと指摘する。
イーサリアライズが特に強調するのが、イーサリアム(ETH)のスケーリング戦略だ。前四半期のコメントで、短期的な手数料収益を犠牲にしてでもブロックスペースを安価にし、長期的には利用需要の拡大によってネットワーク収益を増やす戦略を取っていると同団体は説明していた。Q2ではその効果が収益面にも現れ始めたと指摘。単位当たりのコストを下げることで需要が増加し、結果として全体の利用量や収益が拡大する『Jevonsのパラドックス』が働いている好例だとしている。
また、今後「Glamsterdam(グラムステルダム)」などのアップグレードを通じて、イーサリアムはスケーリングの「真の恩恵」を受けることになると予想している。
さらにイーサリアライズは、イーサリアムの強みをインターネットの歴史になぞらえる。AOLやCompuServeなどの閉鎖型サービスが最終的にTCP/IPを基盤とするオープンなインターネットに取って代わられたように、ブロックチェーンでも特定の企業や金融機関が運営する閉鎖型・コンソーシアム型チェーンより、誰でも参加でき、パブリックな流動性にアクセスできるイーサリアムの優位性が高まると主張した。
解説記事:リーン・イーサリアムとは?マージに続くイーサリアムの次世代ビジョンを解説
リーン・イーサリアムとは、2025年7月にイーサリアム財団のジャスティン・ドレイク氏が提唱した長期ビジョン。量子耐性・大幅なスケーリング・プライバシーを3〜4年かけて段階的に実現する構想を解説します。






